減量治療
ウゴービ®による減量治療

肥満症とは?
日本肥満症学会によると、肥満(BMI=体重[㎏]/身長[m]2が25以上)があり、肥満による11種の健康障害(合併症)が1つ以上あるか、健康障害を起こしやすい内臓脂肪蓄積がある場合に「肥満症」と診断され、減量による医学的治療の対象になると言われています。BMIが35以上の場合、高度肥満症と定義されています。
肥満に起因または関連する健康障害
肥満症の診断基準として、下記に示す11項目の健康障害が挙げられています。
- 耐糖能異常(2型糖尿病)
- 脂質異常症(高脂血症)
- 高血圧症
- 高尿酸結晶(痛風)
- 冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)
- 脳梗塞または一過性脳虚血発作
- 非アルコール性脂肪性肝疾患
- 月経異常または女性不妊
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群
- 運動器疾患(変形性膝関節症、変形性腰椎症など)
- 肥満関連腎臓病
資料参考
日本肥満学会:https://www.jasso.or.jp/contents/wod/index.html
肥満症(減量)治療とは
肥満症治療は、肥満に起因または関連する健康障害、例えば糖尿病や高血圧症、脂質異常症などの進行予防や治療効果の向上、運動器疾患に伴う痛みの軽減につながることが期待できるとされています。肥満症に対する治療は、食事療法や運動療法、行動療法が基本とされており、その他の治療として、外科的手術(胃の容量を小さくする)、食欲抑制薬(マジンドール)、GLP-1受容体作動薬(一般名:セマグルチド)(商品名:ウゴービ®)といった薬物療法などがあります。
持続型GLP-1受容体作動薬(ウゴービ®)
ウゴービ®とは
持続型GLP-1受容体作動薬(ウゴービ®)とは、セマグルチドという有効成分を有し、2023年3月に肥満症治療薬として厚生労働省で認可されました。GLP-1とは、「グルカゴン様ペプチド-1」の略で、膵臓から分泌されるホルモンの一種で、血糖値を下げる作用があります。セマグルチドは、GLP-1の働きを促進し、下記のような様々な作用をもたらします。
脳への作用 | :満腹感を増加させ、食欲を減らす。 |
---|---|
胃への作用 | :胃の内容物をゆっくり排泄させ、血糖値の急上昇を抑制する。 |
膵臓への作用 | :インスリン分泌を促進し、血糖値の上昇を抑制する。 |
小腸への作用 | :GLP-1分泌を促進する。 |

ウゴービ®

皮下注射で接種します
ウゴービ®の減量効果
ウゴービの減量効果は、複数の大規模臨床試験(STEP試験)によって科学的に証明されています。
2021年にNew England Journal of Medicineに掲載されたSTEP 1試験では、非糖尿病の肥満患者1961人を対象に、68週間の治療を実施。結果として、ウゴービ群では平均14.9%の体重減少(ベースライン体重から約15kg前後)が確認されました。これは、対照群(プラセボ群)の体重減少2.4%と比較して極めて大きな差であり、統計的にも臨床的にも明確な有効性が示されています。
参考文献
Wilding JPH, et al. (2021). Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity. New England Journal of Medicine, 384:989–1002.

ウゴービ®の減量効果以外の付随効果
ウゴービによる効果は体重の減少だけにとどまりません。臨床試験においては以下のような健康改善効果も報告されています。
- 血圧の低下
- 空腹時血糖およびHbA1cの改善
- LDLコレステロールの減少
- 肝機能マーカーの改善
- QOL(生活の質)の向上
このように、肥満が引き起こす全身への負荷を軽減する「予防医療」としての意味合いも大きいのがウゴービの特長です。
ウゴービ®治療の流れについて
適応チェックと治療説明
食習慣や生活環境、持病、過去のダイエット歴、現在抱えている健康リスクなどをヒアリングします。
健診や人間ドックのデータがございましたら、ご持参ください。
当院では、薬の安全性を考慮し、BMI25以上、または内臓脂肪型肥満の患者さまを対象とさせていただきます。
ウゴービは、週1回の注射製剤です。
担当看護師より自己注射の方法について、画像や図を用いながら分かりやすくご説明します。
治療開始
当院では、ウゴービの処方に際し、高用量から始めることはせず、まずは低容量からスタートして、体が薬に慣れるのを見ながら段階的に用量を調整していきます。この漸増ステップは、副作用を軽減しつつ効果を高めるために不可欠なプロセスであり、医師の指導のもとで慎重に進めていきます。
経過観察
副作用や減量状況を把握するためにも、診察時におけるウゴービの処方は最大1ヶ月分とさせていただきます。
体重の変化だけでなく、日々の食欲や睡眠の質、体調の変化についても確認し、必要に応じて治療計画を修正します。
ウゴービ®の副作用について
ウゴービ®の副作用としてもっとも多く報告されているのは、消化器症状です。使用初期には、軽度の吐き気や胃のむかつき、下痢や便秘といった症状を感じることがあります。これらは、体が薬に慣れていない段階で起こりやすく、特に最初の数週間に集中して見られます。しかしながら、時間が経つにつれてこれらの症状は和らぎ、ほとんどの方は問題なく継続できます。その他、食欲減退、げっぷ、頭痛症状などがあります。
一方で、ごく稀に膵炎や胆嚢疾患などの重篤な副作用が起きるケースも報告されています。
副作用を和らげるためには、日常生活の中での工夫も有効です。減量を目的とする治療中であっても、規則正しい食事を心がけ、栄養バランスの良い内容にすることで、消化器系への負担を軽減できる可能性があります。併せて、適度な運動も体調の安定に役立ちます。
ウゴービ®の使用中は脱水症状に注意が必要です。吐き気や下痢があるときは水分や電解質が失われやすくなるため、こまめに水分補給を行いましょう。また、ウゴービ®はすべての人に使える薬ではありません。妊娠中の方、授乳中の方、膵炎の既往歴がある方、甲状腺に関する特定の病歴を持つ方などは、治療が制限されることがあります。ウゴービ®は、他の薬と併用することで作用や副作用に影響を与える可能性があります。特に、糖尿病治療薬との併用には注意が必要です。
オプション
当院では、内臓脂肪/皮下脂肪を定量的に測定(CT検査)することが可能です(即日、結果判明)。
現状を把握することは治療意欲を高めることにもつながります。検査をご希望の方はお申し付けください。

ウゴービ®の料金について
ウゴービ®による肥満症治療には、保険診療と自費診療(保険外診療)の2つの方法があります。
保険診療で治療を受けるためには、国が定めた施設基準を満たした医療機関において、適切な食事療法および運動療法を6ヶ月以上行っても十分な効果が得られなかった場合に限り、医療保険の適用が可能となります。
このため、必要とされる多くの患者さまにとって、治療の選択肢が限られてしまっているのが現状です。
当院では、医療保険が適用されない患者さまに対し、自費診療(保険外診療)としてウゴービ®による肥満症治療をご提供しております。
そのため、診察・検査・処方を含むすべての費用が健康保険の対象外となり、自費でのご負担となりますので、あらかじめご了承ください。
ウゴービ®の費用
容量 | 1本あたりの値段 | 1ヶ月あたりの値段 |
---|---|---|
0.25mg | 3,500円(税込) | 14,000円(税込) |
0.5mg | 6,000円(税込) | 24,000円(税込) |
1mg | 9,000円(税込) | 36,000円(税込) |
1.7mg | 13,000円(税込) | 52,000円(税込) |
2.4mg | 18,000円(税込) | 72,000円(税込) |
診察費用
初診料 | 1,500円(税込) |
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内臓脂肪測定 | 5,000円(税込) |